誰にも言えなくて1(改訂版)

あまりに文章が酷かった為、2015/05に改訂。
それでも駄文ではありますが、どうかお付き合いくださいませ。

※下部にある後書きは当時のものです。




小さい頃は、死んだと聞かされた父が、実はまだ生きているだとか、
それがどっかの財閥のお偉いさんだとか、
腹違いの兄がいるらしいとか。


その大きな屋敷に、昔、使用人として勤めていた母が、
当主を色目を使って誑(たぶら)かし、そして子供を身ごもったとか、
それが原因で屋敷を追い出されて、
今はその息子と二人、貧しい暮らしをしているだとか。



近所の口さがない人たちの噂話は、
嫌でも信哉(しんや)の耳に入ってきた。



それでも信哉は、聞こえなかったフリをし、
井戸端会議に花を咲かせているご近所さんに、
「こんにちは」と元気よく挨拶をした。


ランドセルを背負った信哉の背中を見つめるご近所さんが、
またヒソヒソと話しているのも、
気付かないフリをして、信哉は家路を急いだ。




真相はどうであれ、生活が困窮しているのは事実だし、
信哉は、他の子供たちと同じように、何かを欲しがったり、
わがままを言ってはいけないのだと理解していた。


だからこそ、母の恥にならぬよう、精一杯イイ子でいるように努めた。


世間の遠慮のない噂話から、
母を守ってやりたいと幼心に誓い、
早く大きくなって、母を助けてやりたかった。






だが、それから数年が経ち、
母親はあっけなく他界してしまった。



ありきたりな理由だ。
女手一つで子供を育てるための過酷な労働。


ありきたり過ぎて、悲しすぎて、涙すら出なかった。

ただただ、母親を助けることのできなかった後悔だけが、
信哉の薄い胸を占めていた。




母が親戚から縁を切られていたことや、
費用などの面からも、通夜や葬式は行わず、
火葬のみの直葬にしてもらった。





しんと静まり返った家と、母の遺影。


もともと働きづめの母はほとんど家におらず、
一人で家にいることが多かったが、
だが、本当の意味でとうとう一人になってしまった。




感覚がマヒしていたのか、
何も考えることができないまま、漠然とした日々を過ごしていた。




だがそんなある日、信哉の父親だと名乗る人物が現れた。





橘京司(たちばな きょうじ)。
多大なる財を築き上げた橘家の当主で、
この男が現れて初めて、あの噂話が真実なのだと知った。


父は背が高く、50歳を超えているとは思えないほど若若しくて、
衣装の上からでも鍛え抜かれただろう体躯がうかがえる。

野性味のある牡、といった魅力を纏った容姿は、
さぞ人を引き付けてやまないだろう。






その父親の、自分を引き取りたいという申し出を信哉は断った。

今更である。



母親が信哉を身籠ったとき、誰もが母を軽蔑した。
母の両親さえも。


そんなに橘の財産が欲しいのかと、
被害者である彼女に辛辣な言葉を投げつけた。


実際には、母親が父を誑かしたのではなく、
下半身にだらしない父の毒牙にかかっただけなのだ。



だが正妻を初め、
母をよく思っていない者たちの狡猾な遣り口に、
母だけが悪者にされてしまったのだ。


当時の父も、特別母を想っていたわけでもなかったのか、
ちょうどいい厄介払いだとでも思ったのか、
出ていく母を守ろうともしなかったのだろう。




孤立した母は、それらを払拭するために、
己の力のみで全てこなしてきた。

身を粉にして働き、全力で信哉を守ってきたのだ。
だがそれが崇り、もうこの世にはいなくなってしまったのだが。





そんな母を見て育ってきたのだ。生き抜く方法は知っている。
今更、手を差しのべられても困るだけだ。


どうせなら、母が生きてるうちに、助けてほしかった。
一人で生きていく覚悟ができていた信哉にとって、
大人に頼るという選択肢は存在しない。




だが年齢上、どうしても誰かの保護下になくてはならない事実を
引き合いに出されてはどうすることもできず、
信哉は父の申し出を受けざるを得なくなってしまった。







母と過ごした古いアパートを出て、
小さなバッグ一つで父の用意した高級車へと乗り込む。

移動の間、父が何かを言っていたが、それらはすべて信哉を耳をすり抜け、
意味をもった言葉として信哉の中にとどまることはなかった。





広大な敷地を取り囲む高い塀の一画にある豪奢な門を抜けると、
そこにはまるで城のような洋宅が構えていた。


後部座席のドアが開けられ、使用人らしき人物が降りるようにジェスチャーをする。

重い脚をなんとか動かし、車を降りると、
ぞくりとするほどの異様な空気だった。


四面楚歌。

まさにそれだ。

あらゆる角度から、
冷たい侮蔑の眼差しが、肌に突き刺さる。



やはり、来るべきではなかった。
・・・・来たくなかった。



何がなんでも、父の申し出を、断るべきだった。


だがそれももう遅い。



信哉を快く思っている者など、この屋敷に一人たりともいないのだ。


妾腹の子が、どんな扱いを受けるかなんて目に見えている。



信哉の辛い日々の始まりだった。


2へ
異母兄弟でいじめ。
ありきたりの設定ですが、一度やってみたかったんです〜〜。
文章力が無いので、「はっ」って感じですが、鼻で嘲笑いつつ、読んでもらえたら幸いですvv


2009/11/23
(2015/04/25 改訂)