誰にも言えなくて3


「いつまで寝てるんですか。早く支度をしてください」


冷たく下りてきた声は、あの女使用人のものだった。




兄に凌辱されたあの日から二日程経ち、熱は下がったものの、
体力の消耗は激しく、すぐに日常生活に戻るのは酷というものだが、
周囲はそれを許さなかった。



橘の体裁を気にするなら、
信哉の体調を気にするべきだが、
この女使用人には信哉を労わるという概念はまったくない。



むしろ、苦しんでいるのを面白がっている節がある。




信哉が熱を出したと分かった時も、
一応、解熱剤と氷嚢はあてがわれたが、
むろん手厚い看病などはなかった。








「行けますよね。」


反論は許さないといった勢いに負け、こくんと頷いた。


「だったら、どんくさいことしてないで、早くしてください。
それから、ベッドメイキングは自分でしてくださいね」



そう言って彼女は、信哉を起こすだけ起こして、
本来の仕事せず、さっさと部屋を出て行ってしまった。



悲しい気持ちになる暇などなく、ベッドメイクを終えると、
信哉は学校へ行く支度を始めた。



今日から信哉は、新しい学校へと通うことになる。



また広がる新しい世界。
きっとそこでも信哉は好奇の目で見られるのだろう。


でも、もうどうでもいい。


なにが自分を待ち受けていてもいいと、
投げやりな気持ちになっていた。


もう、諦めた。



信哉が幸せになることを、周囲は許しはしない。





一応、学校への送迎は車で行われるようだが、
運転手の態度も冷めたいもので、

その冷ややかな視線と、車内での沈黙に、
信哉は押しつぶされしまいそうだった。










「ほら・・・あれが橘の・・・」


「ああ・・・・意外と・・・」


ひそひそと話す声が、嫌でも信哉の耳に入る。

時期外れの転入生が、あの噂の橘家の妾腹だということもあり、
机にぽつんと座る信哉を、みんな遠巻きに見ている。


興味はあるが、積極的には関わりを持ちたくないというのが
まる分かりだった。


別に、独りなのは今に始まったことではない。
前の学校でも、苛められてこそなかったけど、
友達はいないに等しかった。




今思えば、信哉自身が友達を作る気がなかったのかもしれない。


寂しさというのは、度を超すと対人関係を煩わしく想わせるらしい。




ただでさえ、熱の下がったばかりの身体だ。
なにもかもが億劫だった。



そんな信哉にとって、クラスメイトのそんな態度は好都合だった。











「橘・・・くん、大丈夫?顔色悪いよ?」

だが、信哉の状態に見かねて声をかけてきたのが、
地元で有名な大企業の御曹司、本郷 孝雄(ほんごう たかお)だった。


大きな工場をいくつも持ち、
様々な分野に手を広げているらしく、もちろん橘家とも大きな取引がある。


橘家の体面という周囲の言葉が脳裏をよぎる。



辛さや不調、不満を見せてはいけない。




「うん、大丈夫・・・ありがとう」

自分にできる精一杯の笑顔を作って信哉は答えた。



「・・・なんか無理してね?・・・保険室・・・つれてくぜ?」

男らしく整った顔が心配げにゆがめられる。



短く刈りあげられた髪は、長めに残されたトップをワックスで軽く散らし、
爽やかな本人の印象にとてもよく似合っている。



中学生にしては背も高く、
全体的にすっきりした容姿は、男女問わずとてもモテそうだ。



「いや、ほんとに大丈夫・・・・」


そう言って、立ち上がろうとすれば、立ち眩みで目の前が真っ暗になった。
崩れ落ちそうになる身体を、本郷が抱き止める。



「ほら〜〜〜。なんかお前、ほっとけねぇよ!ほら!行くぞ、保健室!」


遠慮なく信哉に接してくれる本郷に、どことなく親近感を抱いた。



「うん・・・・ありがと・・・あの・・・・」

「本郷。本郷孝雄。ちゃんと覚えてくれよ」

「・・・うん・・・ありがとう、本郷くん」


にっかりと笑う本郷に、思わず信哉の表情も綻んだ。











「う〜〜〜ん、こりゃ貧血だねぇ。ちゃんと食べてる・・・?」

「・・・・・・・・はい。」






本郷に付き添われてきた保健室は、
これまでいた学校とは全く違う内装だった。



どこのホテルだと言わんばかりに、
高級感あふれる、モダンな感じにまとめられているが、
独特の匂いが、ココがまちがいなく保健室だということを主張していた。





「環境が変わって食欲なくなったとか?とりあえず横になって?」

綺麗な顔がふわりと笑う。



久世歩(くぜ あゆむ)。この学校の保険医だ。



日本人だというのに、結わえられた長い髪がとても様になっている。
色素が薄いのか、肌も髪も透けるように綺麗だ。



綺麗な顔といっても、
決して女性っぽくないのがとても羨ましいところで、
女の子みたいな自分の外見とは大違いだ。



思わず見惚れてしまう。



「おいおい、橘〜。なに?先生に見惚れてんの?」

「え?や・・・や、別に・・・そんな・・・」


図星をつかれてドキリとしたが、
「橘」と、呼び捨てで呼ばれたことがとても新鮮で、
そのことも胸をドキッとさせる一因だった。


まるで友達ができたような、くすぐったくも温かい気持ちに包まれた。






その後も、信哉が眠ってしまうまで、3人での雑談が続いた。
この楽しい時間がいつまでもつづけばいいのに。


信哉にとって、初めて心を許せる他人に出会えた気がしたが、
だが、そんな平和が長く続くわけなどなかった。












「何をニヤついているんだ?学校でめぼしい男でも見つけたか?」


自室で制服を着替えようとしたとき、今日は仕事が早く終わったのか、
突然、京一郎が部屋に入ってきた。



めぼしい「男」。



兄は、どうあっても信哉を男を漁る淫乱に仕立て上げたいらしい。



「しかし今日は、保健室に担ぎ込まれたそうじゃないか。
あれほど橘の体面があると言ったのに・・・・。
前を蔑ろにしてるなんて噂が広まったらどうしてくれる?」


どうやら京一郎は、信哉が熱を出していたことを、
知らされていないようだ。


保健室に担ぎこまれたのは、
犯されたことを根に持っての、
橘の信用を落とすための演技だと思ったらしい。





「あの・・・京一郎さん・・・・」

兄の名を呼んだ瞬間、
バタンっ!と、ドアを激しく閉められた。


激しい音に、ビクリと身体が強張る。




「京一郎『さん』・・・・・ねぇ・・・」

そう呟きながら眉間にしわを寄せ、扉の施錠をすると、
京一郎は信哉におもむろに近づいてきた。


思わず後ずさる。



「俺はお前に、名前を呼ばれたくはない」


低い声音に信哉は怯えた。


「でも・・・あの・・・」



信哉だって、なんとなくそう呼んだわけではなかった。


逆だった。

妾腹の自分が、
京一郎に対して「兄」という形で呼んではいけない気がして、
気を遣って、あえて名前で呼んだのだけれど。



どうやら、京一郎はそれが気に食わないらしい。




「いいか、親父のことは、お父様。俺のことはお兄様だ。
人前でぽろっとでるからね。日頃からちゃんとそう呼ぶんだ。いいな」



「・・・・・・」

「ほら、どうした?分かったのか?わかんねぇのか?」



「うっ」

顎を掴まれ上を向かされる。


「分かったら言ってみろ」


「は・・・はい・・・、お兄・・・様・・・・」



その言葉を聞いた京一郎は満足げに笑みを浮かべる。



「よし・・・じゃあ・・・さっそく脱いでもらおうか」

「え!?」

「え?じゃないだろ。脱いで脚を広げろ。
他に男を咥えてねぇか調べてやる」


蔑んだ言い方に憤りを感じる。


「そんなこと・・・してな・・・・あっ!!」



頬を張られてベッドに倒れ込み、
体勢を立て直す前に京一郎が上から押さえつけてきた。


「やめ・・・っ京い・・・・お、お兄様っ・・・・!」



「いいねぇ・・・お兄様っての・・・すんげぇ燃える・・・」

ゴリッと硬いものが押し当てられる。




兄は、明らかに欲情していた。



疼く頬の痛みに、
先日の惨い仕打ちを思い出し、恐怖に身が震える。
自分の奥を容赦なく犯し、侵入してきた恐怖。



「や・・・・っ」

拒絶を口にすれば、京一郎の手が振り上げられる。
ギュッと目を閉じた。
やはり、さっきと同じ側の頬を張られ、痛みにじわりと涙が出る。



「そうそう・・・おふくろが出ていったぜ。
お前と同じ空気を吸いたくないんだとよ。

・・・まぁ、行く宛のないお前と違って、
別宅なんて沢山あるから心配はしてないが・・・、
やっぱり面白くないよなぁ、
お前がここに残って、おふくろが出ていくのなんてな」


頬の痛みとは別に、申し訳なさに涙が出る。

存在を責められた。


改めて、自分は幸せを望んではいけないのだと思った。





「ほら、早く脱げって」


いいなりにさえなっていれば傷は浅い。
打たれる頻度も減るかもしれない。



シャツのボタンを、
もつれる手で、どうにか一つずつ外していく。


ひとつひとつ外していくごとに、
京一郎の視線が下へと下がり、卑下た笑いを浮かべている。



最後の一つを外し終えると、
その手を掴まれ、顔の両脇に固定されてしまった。


「っ・・・!」


怖くても恥ずかしくても、拒んでなどいけない。
信哉は顔を背け、目をきつく閉じる。


信哉が抵抗しないと分かると、
京一郎は無遠慮に、信哉の脚を左右に広げた。


先日、京一郎に犯された場所をまじまじと見られる。
恥ずかしさで涙が止まらない。


「ひっ・・・!」

「へぇ・・・以外に治りが早いな・・・・」

そう言って中指を舐め、唾液を絡ませると、
濡れた指を信哉の蕾へ、そろりと挿入させた。



「いっ・・・・!」


「・・・この前みたいに、
いきなり俺のを突っ込んだ時に比べりゃ痛くねぇだろ?」




「・・・・っ・・・!」



・・・痛みだけなら、どんなにか良かったことか。



「ったく・・・めんどくせぇな・・・。
今度から自分で解しておけよ。
俺は突っ込むだけの状態にしておけ。いいな?」


人間に向けられたとは思えない言葉。

それは、これからも京一郎とのこの関係が続くということだ。
京一郎の性欲処理に利用されるのだ。



あまりにも惨い言い様に黙っていると、再び強引に上向かされる。

掴まれた顎に、みしみしと力が加えられ、
鈍い痛みに、こくこくとうなずくことしかできなかった。



「よし、わかればいい」


零れ落ちる信哉の涙を見ると、満足げな笑みを浮かべ、
指を二本に増やし、信哉の蕾を解していく。


しっとりと柔らかくなったのを確認すると、
京一郎はそこへ、猛った己を押し当てた。




猛りは、ずぶずぶと、中へと入ってきた。

熱い剛直が、再び信哉を犯す。



「いっ・・・痛っ・・・・や・・・・」

「はぁ・・・やっぱキツイな・・・・でも・・・たまんねぇ・・・」



そう言いながら、京一郎はゆっくりと少しずつ腰を進める。



全て挿れ終えたのか、京一郎がゆっくりと息を吐いた。



「確かに、誰も咥え込んではいないみたいだな・・・俺以外は・・・・」


縮こまった信哉の性器が目に入ると、
京一郎はそれをすくいとり、扱きあげた。


「ひっ・・・」

自慰もほとんどしたことないのに、
兄の手で扱き上げられれば、堪らない快感が込み上げる。

先端から体液が溢れ、その滑りを借りて
京一郎の手はどんどん信哉を追い上げいく。


信哉のものが質量を増し、硬く反り返る頃には、
蕾の強張りが解け、京一郎の抽挿を難なく許していた。



何度も激しく貫かれ、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響く。


「――っ!・・・んっ!」

必死に兄の蹂躙に耐える。


血が滲むほどに強く、信哉は己の手の甲に歯を立て、
湧き上がってくるありえない感覚に必至で耐えた。



(こんなのおかしい・・・)


痛いだけならまだよかった。



「・・・っ・・・・!」




じわじわとそれは信哉の身体に広がっていく。





信哉が耐えている二度目のそれは、
明らかに、兄の剛直から送り込まれる快感だった。




4へ

ちょい短めですが、今回はここまで。信哉くんの助け舟?本郷くん登場・・・・。兄さん相変わらずです(-_-;)

や、相変わらずなのはへたくそな文章(-_-;)


2009/12/21

2015/05 修正