ゆずれないモノ 1

ありふれた、ド定番のお話ですが(や、全部そうですが)
前から書いてみたかった組み合わせなんです。
拙いですが、よろしかったらどうぞ♪



「や・・・・あっ・・・!やめっ・・・」

もうどのくらいこうしているのか。
なかなか途絶えない、断続的に送り込まれてくる快感に、声は艶を増していく一方だ。

「い・・・・いや・・だ・・・もうっ・・・・ああ・・・・」

ぐちゃぐちゃと、中を掻き回す熱い棒の動きが早くなる。

「あっ、あっ、あっ、あああっ」


はぁ、はぁ、と、上から聞こえてくる声は、気持ち悪いはずなのに、
媚肉を高速で突き上げてくるそれは、
三条亜月(さんじょう あつき)に抗えない程の壮絶な快感もたらした。


腰がじんわりと甘く痺れ、何度目かの射精を強要され、亜月は一際高い声で喘ぐ。


(くそ・・・!ちっくしょう・・・!!)


「あ・・・・うっ・・・ああっ・・・」
それでもその熱は中を掻きまわし続け、いっこうに萎える気配もなく、かちかちに硬い。

屈辱と生理的な涙は、目を覆っている布に吸い込まれ、頬を伝ことはない。



どうしてこんなことになったのか。







三条亜月は、自他共に認める容姿の持ち主だ。
180を超える長身に引き締まった身体。
そしてさらに頭身を高く見せる小さな顔。

その形の良い輪郭には、形のよいパーツが完璧に配置されており、
品の良い明るめのブラウンに染められた髪は、
ゆるくカーブを描いて風にふわりと揺れている。

生まれ持った美貌に加え、これまた大企業の社長の御曹司という、
絵に描いたような恵まれた環境に育った。



ただ、そのせいか性格はお世辞にも穏やかとは言えず、
「醜いやつに生きる価値は無い」などと言ってはばからず、

その口の悪さや、完璧を極めた外見ゆえに許されてきた、
身勝手やワガママのせいで、ごく一部の常識人からは敬遠されがちだ。



それでもやはり、
華やかな亜月の周りには多くの人々が、各々の下心を携えて集まってくる。

寄ってくる女の多くは、亜月とのセックスがお目当てだし、
そのお零れにあずかろうという男も多い。


お決まりのように女癖の悪い亜月は、一度寝れば飽きるのか、
よほど気に入らない限り同じ女とは寝ない。



一夜限りだ。

その一夜限りの夢に胸を膨らませ、
女たちはこぞって自分を着飾り、亜月に見初められるよう努力を惜しまない。

そうやって見初められて、一度でも抱かれれば、
それは女たちにとってはまるで勲章のように輝き、
彼女たちのステータスとなっている。


あの亜月に抱かれた。
その誇りが、彼女たちの自信へと繋がっている。

亜月とのセックスは、一種のブランドなのだ。







また、自分に釣り合う人間としか付き合いたくないのか、
亜月の周囲にいる連れも、それなりにレベルの高い男性陣が多く、
とりわけ、「友人」として彼の横に立てることはそれなりに名誉なことなのだ。



そんなカリスマ性を発揮する亜月が、どうしても相容れない存在がある。




いつもアニメやらゲームの気色の悪い話で盛り上がり、
ダサくて悪趣味で、お世辞でも「素敵だよ」なって言えない連中。




いわゆる「オタク」と呼ばれる連中だ。


その中でも特に気に入らないのが、オタクの中でもとりわけ目立つ、
山野紅葉(やまの こうよう)だ。

オシャレのつもりなのか、最近は髪まで伸ばし、
それを後ろで束ねて、ただでさえ不細工なのに、さらに不気味さを増している。

視界が相当悪いであろうに、ぶ厚い傷だらけのレンズに、
黒くてダサい大きめのフレームのメガネ。

小太りなのか、少しだけ厚みのある身体に纏っているのは、
茶色の下地に赤とグリーンと黄色のラインの入った、
どこで買ったのかが逆に気になる、趣味の悪いネルシャツ。

そのシャツは決まって、なぜかボトムスにインされている。

その集まりはだいていそんな格好をしていて、
オタクはそれを着なくてはいけない決まりがあるのか、とさえ思えてくる。



到底理解し難い、最低最悪の気持ち悪いオタク野郎だ。



生身の人間も知らず、右手を相手に、
紙の上の二次元の世界に青春を捧げる、痛い存在。


そんなイタイ童貞野郎の山野が自分の視界に入るのがどうしても目障りで、
ついつい存在や人格を否定するような言葉を浴びせてしまうのだ。


「ねぇ、そんな不細工で童貞でさ、生きてて楽しいの?」
俺だったら生きていけねぇ、と、続けて罵り、周囲もくすくすと笑っている。


聞こえているはずだが、山野は我関せずと無視を決め込む。


「今日も右手が相手なのか?
それとも、たまにはもどかしい左手?どっちにしても腱鞘炎には気を付けなよ童貞くん」
あきらかに見下した言葉に周囲がどっと笑う。


それでも山野は亜月の言葉を無視し、決して言い返すことはない。


その態度は、どんどん亜月を調子に乗らせていき、
相手の人格を無視した罵声はどんどん酷くなっていく。

「つーかさ、お前、本物の女のアソコ見たことあんの?知らねぇのにどうやってマスかくんだよ」

ひゃはは、と、下品な悪い笑い声を上げる。
妄想で賄っていると、お安くできてるんだよと、さらに口汚く罵る。

「・・・・っ」

それでも山野は、唇を噛み締めるだけでやはり何も言わなかった。



山野の決めこむ「無視」に対して、亜月はだんだん苛立ちを覚える。
華やかでいつも人の中心にいる亜月は、無視され慣れていない為、
この手の態度が死ぬほど嫌いだ。



「おい、なに無視してんだよ、ヲタクのくせに!!」


肩を思い切り掴んで、自分の方に向き直らせる。

「痛っ・・・な・・・何をするんだ・・・キミ・・・!」


オタクごときに「キミ」扱いされて、瞬時に頭に血が登る。
生意気に歯向かってきた山野の肩を、今度は思い切り突き飛ばした。

机の端におもいっきり背中をぶつけたらしく、悲鳴をあげたあと、
山野はそのままうずくまってしまった。

それでも、微塵もかわいそうとは思わず、亜月は周囲の仲間と
その様を見て大笑いし、山野に向かって唾を吐きかけた。


亜月からは見えない床に這い蹲(つくば)り、
痛みと侮辱に耐える山野の手が、ぎゅ・・・と拳を握る。

「ちょ・・・あ、あんまりじゃないですか・・・三条くん・・・!」
流石に、山野の友人と見られるオタク仲間が抗議したが、
周囲の射すくめるような視線に強くも言えず、山野を抱えてその場を去っていった。

「負け犬ども!不細工同士でホモるなよ〜〜!」

背後から、亜月が止(とど)めの罵声を浴びせ、そして教室は再び大爆笑が起こった。

キモいとか勘弁しろとか、続けて罵倒する声に押されるように、
去っていく山野の後ろ姿を、亜月は悪びれもなく鼻を鳴らして面白そうに見送った。


その一部始終を見ていた、他の数人の学生が、その仕打ちに眉をひそめていたが、
亜月がそんなものを気にするはずもなく、そして彼らも直接亜月を咎めたりはしない。


亜月に歯向かおうものなら、その取り巻きの連中に何をされるのかわからない。
みんな亜月が怖いのだ。

そうやって、亜月は見当違いな権力を一層強めていく。


強い反感を、かっているとも知らず。







11月中旬。
街の大部分がクリスマス色に染められ、恒例のクリスマスソングもすでに飽きてきた。

あと1ヶ月もすれば冬休みだ。
亜月とクリスマスを過ごそうと、女たちはこぞって様々なアプローチをかけてくる。


男たちも、クリスマスだけでも共に過ごす彼女がほしいらしく、
やれ合コンはどうするだのと、しつこく亜月につきまとった。

さすがに鬱陶しくて、友人の一人、西川に連中を押し付けて、自分はさっさと退散してしまう。


西川は、とにかく頭が良くて口も達者だ。おそらく亜月でも口ではかなわない。
厳選された品の良い銀縁の眼鏡が、
理知的な瞳とよく似合っていて、いかにも出来る男といった容貌で、女子にも人気が高い。






「おい、亜月、だいじょうぶか?ほら、飲めよ」
そしてもう一人の友人、坂下は缶コーヒーを亜月に差し出した。



「モテるのも大変だな」
そういう坂下もまた、亜月が友人として側に置くだけあってかなりの容姿を誇る。

カッコいい、というより「美人」と表現したほうがしっくりくるが、
声は意外に低くて渋く、いい意味で見た目を裏切るいい声だ。

その綺麗なアーモンド形の瞳に、今は同情を色をにじませている。


この二人はほかの連中に比べて、余裕と自信があるのか、
女だ何だとがっついてもいないし、亜月に対して見返りも求めていないので、
亜月も心を許している。




「今日はもう帰ったら?」
少しだけ疲れの滲んでいる顔を心配してか、
今日の合コンはやめたほうがいいと坂下が促してきた。

「そうそう、あとは俺らに任せて」

連中をうまく説得したらしい西川が、亜月のもとへ帰ってきて、
安心させるように、ぽんと肩を叩く。


亜月の機嫌の悪いときは、西川が周囲を適当にあしらい、
坂下が亜月のご機嫌をとる。

それも彼らの役目だ。


連日の合コンや女たちのアプローチに、疲れていた亜月は、そうだな、と呟いて、
今日は帰宅すること選んだ。



送ろうか、と申し出る坂下の親切を亜月は断った。
人に囲まれるのは悪い気がしないが、今はひとりになりたかった。

久しぶりに一人で道を歩く。

息苦しさから解放され、
その開放感に気も緩み、亜月は大きく伸びをした。

(ま、あの二人がいりゃ、今日の合コンはなんとかなんだろ)

今日は行きつけのダイニングバーに寄ろうかとも思ったが、
たまには瓶ビールでも買って、一人でのんびりするのも悪くない。

そう思い、コンビニに寄ろうとルートを変え、
少しでも近道になるようにと、いつもは通らない人気のない小道へと入ったのが間違いだった。



少し、気を緩めすぎたのか、

「!?・・・何・・・!!」

気配に気づいた時にはすでに遅く、
突然背後から羽交い絞めにされ、口元を覆われた。

その力は、亜月の腕力をもってしても振りほどくことができず、
甘い香りを嗅いだ時には、自分の意識は遠くなっていった。






(・・あ・・・なに・・・?ん・・・なんか・・・・)
それから、どのくらいの時間が流れたのはわかならい。


じわりと、身体の奥底が引き連れるような、
えも言われぬ快楽によって目を覚ましたときには、
既にその灼熱の猛りは、亜月の中で縦横無尽に暴れまわっていた。

(いや・・・だ・・・なに・・・?熱・・・・っ!)

意識が浮上したときはすでに、自分は得体のしれない熱に貫かれ、犯されていたのだ。



叫ぼうにも、口元を何かで塞がれていて声が出ない。
この状況を打破しようと試みるが、両手首が縛られ、自由にならないことを知る。


「んっ・・・!うんっ」



「おや、起きたみたいだね」

どこかで聞いたことがあるような声が降りてきた。
でも、思い出せない。
不自然なしゃべり方。まるで何かを演じているかのような。


「いい眺めだよ、三条くん」


(誰だ・・・・?こいつは俺を知っている・・・?)


男は息も荒く、さらに亜月の脚を高く上げ、繋がりを深めてくる。

「うむんっ!」

猿轡のせいで呻くことしかできなくて。

「まったく・・・色気のない声だよねぇ・・・」

見えない。動けない。喋れない。でも次々に送り込まれてくる快感。


「ま、こんなものが口を塞いでたら、可愛い声、出ないよね」
男は腰の動きを止めることなく続ける。

「というか、男でも、かわいい声って出せるものなのかなぁ・・・」

口にハメられていた異物が引き抜かれた。
罵声を浴びせてやろうと空気をたくさん吸い込めば、その途端に深く抉られる。

「あっ・・・あぁん・・・・!」

自分が出した声とは思えない、女みたいなみっともない声。

「お・・・!いいね・・・かわいいね・・・うん・・・!ありだね」

「や・・・あん・・・!て、てめぇ!・・・あっ!あっ!」

てめぇ、と言った途端、それを咎めるようにその硬質な熱杭は、
亜月の一番敏感な部分を容赦なく突き上げきた。

何度も、何度も。
しつこくしつこく、そこばかりを。


「も・・・や・・・・んあああっ・・・・・!」
「てめぇとかさ、僕に向かって言っちゃダメでしょ・・・そんな子はお仕置きをしないと」

亜月の身体は大きく痙攣し、的確な突き上げにとうとう達してしまい、男を締め付ける。



「くうっ・・・三条くん・・・出るっ・・・」
亜月の搾り取るような襞の締め付けに、男も亜月の中に熱を注ぐ。
一滴残らず注ぐように何度か大きく腰を突き入れ、すべて出しきる。

中を満たすその熱に、亜月は思わず身震いする。


引き抜かれるかと思いきや、中のモノはだんだんと質量と硬度を増し、
再び、亜月の中を、卑猥な音を立てて突き上げ始めた。









そうして今に至るまで、亜月はこの男にずっと犯され続けているのだ。



(・・・くそ・・・!いい加減、終われよっ・・・・)

何度も射精させられているのに、それでも性感帯への突き上げはまだ終わりそうにない。
堪え性のない亜月は、すさまじい快楽に逆らえず、声を我慢するなんてこともできない。


「はは・・・・あははは・・・」



男は急に笑い出した。



「いい様だよね、三条くん・・・こんな僕なんかに犯されて・・・こんなに乱れちゃって」

呟く男の声に、聞き覚えがあるが、誰ものか全く見当がつかない。
こんな声で、恐ろしいくらい巧みな腰使いをしそうな男が亜月の周りにいただろうか。


「だ・・・れだ・・・お前っ・・・あっ」

本当に巧みだ。その動きに翻弄される。

くちゅ・・・とした水音が耳をも犯して、ぬるついた熱が粘膜を擦り上げれば
表現しがたい悦楽が亜月を支配していく。



「・・・僕の正体・・・知りたい・・・?」

男は腰の動きを止めた。
快楽の波が突然途絶え、不覚にも亜月は不満を覚える。




「誰・・・なんだよ、お前・・・」


みっちりと男を加え込んだ粘膜が、動かないそれに焦れて、
ひくっと収縮し、男を締め付ける。
自分の意思とは無関係に蠢くそれに、亜月は動揺した。


「へぇ、もう男を誘う動きを覚えたの?イケない処女たんだねぇ」
処女という言葉を使って女に貶める。

「もう・・・処女じゃ、ないけど、ね」
そしてその言葉で、なにか大事なものを喪失したのを実感させられて。

「僕が・・・・」
男は強調して続けた。

「三条くんの処女・・・もらっちゃった・・・・」

ひくん・・・とそこがさらに収縮する。






「きっと君は、僕の正体を知ったら、死にたくなるかもね」


そう言って、おもむろに亜月の視界を奪ってた布を取り払った。



突然眩しくなり、思わず亜月は目をぎゅ・・・と瞑る。


恐る恐る目をあける。

ぼやけた視界はだんだんクリアになり、そして捉えたその男の正体に、
亜月は愕然とする。


「お・・・まえっ・・・・・」


全身が総毛立つ。

自分を犯していたのは、
自分が最も忌み嫌う男。


「あ・・・山野っ・・・・!」

あまりのショックに、絞り出すようにそれだけ言うのがやっとだった。


心臓がどくどくと嫌な音をたてた。
気色悪い衝撃が全身を突き抜ける。


汚らわしいものに穢されてしまった、絶望にも近い怒り。

こんな奴に自分が犯されていたのかと思うと吐き気がこみ上げてくる。



「い・・いやだ・・・!!」

弾かれたように必死にもがくが、ガシャンと金属の擦れる音が響くだけで、
手の拘束は1ミリも緩まない。

「て・・・てめぇっ・・・・離せっ・・・あっ!ぁんっ・・・あっ」

山野は再び亜月の中を突き上げる。

「キミは学習しないんだね・・・もっと頭がいいかと思っていたのにね。口のきき方に気をつけたまえ」


接合部は泡立ち、
さっきピストンを催促するようにひくついていた粘膜は
嬉しそうに山野にむしゃぶりつく。




「いい様だねぇ・・・馬鹿にしている僕から、こんなに突かれてこんなになって」
「あっ・・・山野っ・・・・山野っ・・・てめっ・・・」


「あっ、そうだ・・・」
何かを思い出したように、山野が不敵に笑った。



「・・・そういえばね、ネットで面白いことやってた・・・」

「あうっ!」

亜月は起立の根元をぐっと掴まれる。
そのまま、山野は亜月の前立腺ををガンガンに突き上げてきた。

「ひあっ・・・あっ・・・ああっ!やめっ・・・!」

強い射精感に焦れ、自ら腰を淫らに振ってしまう。



「こうすれば、出したくても出せないんだって・・・どう?苦しい?」

「いっ・・あっあっ・・・・ひっ・・・!」



「あははは・・・無様だねぇ・・・僕みたいなのに強姦されて・・・!さぞ屈辱だろうねぇ」
癪に障る笑い声にはらわたが煮えたぎる。


「いあっ・・・ああっ・・・山野・・・てめっ・・・ぶっ殺してやる・・・!」

涙に歪む視界で山野を睨みつけようとするが、
アイシャドウで彩られたように赤く潤みきった瞳では、山野の嗜虐心を煽るだけのようで、
苛みは一層ひどくなる。



出したくても出せない苦しさにもがき、嬌声を上げる。

その様を山野は面白そうに見下ろし、妖艶に腰をくねらせる亜月を視線でも犯してくる。


「・・・どう?ありきたりだけどさ・・・僕に、懇願してみる気・・・ないかい?」

山野も亜月の絡みつくような中の動きに感じているのか、
時折掠れるような声で告げてきた。

こいつは、こんなに低く、静かな声だっただろうか。
そんなことに意識を取られ、山野の言っている言葉を理解するのに時間がかかった。

「イカせてください、ご主人様・・・って、言ってごらんよ・・・」

「な・・に・・・・!」
懇願しろと言う。



こんな気色悪い男に懇願するなんて冗談じゃない。

「・・・誰が・・・!あっあっ・・・そこ・・・だめっ・・ああ!」


だが、山野の巧みな腰使いと、達することのできないもどかしさは、
亜月のプライドを打ち砕くのに十分すぎて、亜月の肉体を翻弄していく。

涙と唾液が肌を伝う。

「ほら・・言いなよ・・・ね・・・?いい子だから」

言うまい、と誓っても、送り込まれる快楽と、
意外に心地よい山野の声音に、堪え性のない身体は早くも亜月を裏切った。


「・・・・せて・・・・」

「・・・・は?・・・なに・・・」

「や・・・まのぉ・・・」
名を呼べば、突かれて上擦ってしまうせいで、想像以上に媚びた声になってしまう。

「・・・ご主人様、でしょ」

「くそっ・・・ああっ、あっ、ご・・・主人・・・さまっ・・・!」

オタクの妄想ごっこなんて、いつもなら死んでも御免だが、もうイキたい一心で必死に叫ぶ。

「イカせてください、は・・・?」


「いか・・・せて・・・ください・・・・ご主人・・・さまぁ」
山野の突き上げは止まらない。
戒めも、解かれない。

「いやっ・・・嘘・・・つきっ・・・」
「・・・だって君の中・・・気持いいよ・・・知ってる?どんなふうに僕に絡みつくか・・・」

「い・・・ああっ・・・い・・きたい・・・・!」
「嘘つきは君だ・・・ああ、ほら、またキュンってなったよ・・・やめてほしくないんでしょ?」

狂ってしまいそうな獰猛な快感に、イヤイヤをするように頭を振る。
焦点が合わず、涙で綺麗な顔はぐちゃぐちゃになり、
紙一重の恐怖が、何度も亜月を叫ばせていた。


「はぁ・・・や・・まの・・・せて・・・いかせて・・・ねがっ・・ああっ」
「ふふ・・・どうしようか・・・」

「いや!いやぁ!!いか・・・・イカせて・・・くだ・・・さ・・・」
「じゃ・・・ごめんなさいは・・・?」

「あっ・・ああ・・・ごめ・・・さいっ・・・」
正気なら絶対に謝ったりなんかしないのに。


謝罪を強制させると、やっと戒めが解かれた。
「いあああああっ!」

びゅるっと、勢いよく亜月の尿道から吹き出した。

塞き止められていたそれは、次々に溢れ出て、山野の手と自分の腹をぐっしょりと汚していく。




息が切れ、空いた口を閉じることもできない。

もう、何度イカされ、
何度あられもない声をあげただろう。


未だに身体はビクビクと痙攣し、その余韻がまだ続いている。
こんなセックスは経験したことがない。


やっと満足したのか、山野は亜月から自身を引き抜いた。




山野が少し亜月の体から身を離した瞬間を狙い、
隙ありとばかりに山野を蹴りあげようとしたが、筋肉に全然力が入らず、脚が動かない。


「く・・・・くそっ・・・・!」

この状態で逆らうような態度を向けて、また貫かれてしまってはもう身がもたない。
やってしまった後で亜月は怯えた。

だが、想像したような蹂躙はなく、山野は普通に萎えた自分のものをティッシュで
くるんで拭っていた。



屈辱。

屈辱に胸が押しつぶされ、息苦しくなっていく。

自分の出した精子で腹は汚れ、さっきまで山野に陵辱の限りをつくされたそこは
山野の放ったものを、こぽ・・・と音をたててこぼしている。

そんな醜態を、煌々とした明りの中で山野に晒しているのだ。
自分が見下す男相手に。


山野は服を着たままで前をくつろげだけの格好で、
自分だけが裸体なのもさらに羞恥と屈辱感を煽る。



「山野・・・てめぇ、こんなことしてただで済むと思うな・・・」

この状態で減らず口が叩けるなど、また学習しないと言われてしまいそうだったが、
負けず嫌いが高じて、どうしても言わずにいられなかった。


普段の仕返しとばかりに、激しい暴力が加えられるとも思ったが、
そんなことはせずに、山野は自分の身なりを整え、床に足をつけると、

ガクガクとして脚に力の入らない自分と違い、
しっかりとした足取りでパソコンへと向かう。

肘置き付きの椅子に腰をおろせば、きぃ・・・っと音がなった。


山野は無言のまま、カチカチとパソコンを操作し始めた。

その画面を目で追っていくうちに、亜月の顔はだんだん青ざめていく。



モニターに映し出されていたのは、まさに今、山野の方を向いて呆然としている自分の顔。


「や・・・山野・・・・おま・・・」

す・・・と、冷や汗が流れた。

カチカチとマウスの無機質な音が響く。
そして次に映し出されたのは。

『あっ、あっ、あっ』

大股を広げて、男のものを咥えこみ、あられもなく喘ぐ自分。


『いか・・・せて・・・ください・・・・ご主人・・・さまぁ』

どくどくと心臓が破裂しそうなほど脈打つ。
聞こえてくる音声も、どこか遠い。

「うそ・・・だろ・・・・?」

山野のメガネにパソコンの画面が反射して、レンズに自分の痴態が写りこんでいる。
そしてゆっくり、山野は亜月の方を向いた。


怖い。

撮られていた。

亜月の痴態をすべて。


脅迫されるのだろうか。
山野はこの映像を大学中に撒き散らす気でいるのだろうか。

冷や汗が次から次へと流れていく。





自分が、もっとも毛嫌いする男に犯されて散々喘いで、
あまつさえ、恥ずかしいセリフを口にしたことが知られたら。

ご主人さまなどと呼び、懇願を口にして、何度もイッタことがバレたら。

もしこの映像が、ネットで世界中に流れたら。
目の前が暗くなる。


口の中が以上に乾く。極度の緊張状態に陥いる。


「・・・僕はね、学校にはそんなに友達はいないけど、ネットの世界なら同士がたくさんいるんだよ。」

反射するレンズのせいで、山野の表情が見えない。

「データはね、もう僕のホームページのサーバー上にあげたからね。
たとえここでキミがパソコンを壊したとしても無駄だよ。」

口の端がにやりと上がる。

「そのうちキミが僕を殺したとしても、僕の同士がこれを引き継いで、
君の痴態を全世界にばらまくこともできる。」


「だ・・・誰にも・・・言わないでくれ・・・」

懇願は、自然に口をついて出ていた。


「頼む・・・なんでも言うこと・・・聞く・・・から・・・」

プライドも糞もない。

こんなものをばらまかれるくらいなら、
死んだ方がマシだ、なんて思えるほど意志も根性もない。

ばらまかれるよりも、死ぬよりも、
薄気味悪いオタク野郎の言いなりになることを選んだ。

「いうこと聞くから・・・・」

怖くて悔しくて涙がこぼれ、震えがとまらず、歯がカチカチ音をたてた。



山野の角度が変わり、反射して見えなかったレンズから、やっと目が見えた。
それにホッとした瞬間、亜月の目の前は真っ暗になり、意識を手放した。








目を覚ました時、亜月は自分のマンションにいて、
デジタル時計を見ると、日付が変わっていた。

一瞬、山野とのことは夢だったのではと期待したが、あらぬ部分に鈍痛が走り、
顔をしかめた。

夢ではなかった。

気持ち悪くなり、口元を抑える。
嘔吐感があり、えづいてみるものの、なにも出てこなかった。




家に連れてきたのは山野だろうか。
ドアポストから、中の方に鍵と学生証が落とされている。






きっとバラされる。

馬鹿にしていた亜月を、山野は恨んでいるはずだ。

不安に押しつぶされそうになり、思わずシーツの中に潜り込む。

この事実を知った周りの人たちが、今までやりたい放題だった亜月を、
今後どういう目で見るのかを考えただけでも恐ろしかった。






大学を休んだその日の昼に、坂下から電話があった。

休んだことを心配していたが、
亜月に関して何か変な噂が流れていないかを確認すると、
どんな?と、逆に聞き返されて返答に困った。



無理はするなと念を押す坂下は、ちょっと自分を甘やかしすぎだと、
亜月は今更ながら思う。


いつもちやほやされて、何を言っても許されて。

自分に対して良くは思っていない連中であっても、亜月がにっこり微笑めば、
なにも言ってくることはない。

そんな大人な対応や社交辞令を、自分が強いからだと勘違いしている亜月からしてみれば、
山野から受けた強烈は仕打ちは、自尊心をズタズタにするには十分で。

ただの仕返しではなく、男としてのプライドすら踏みにじられ、
挙句、痴態を撮られてしまうという失態すら演じてしまった。


ただ、坂下の話では、どうやら山野はまだ、ほかの連中にはバラしてはいないらしい。

そのことに安堵した途端、喉の渇きを覚えた。

キッチンに向かおうと脚を床につけば、がくりと崩れ落ちる。

四つん這いんになりながらキッチンまで行き、
冷えたミナラルウォーターで、一気に喉を潤したが、不意に涙がこぼれてきた。

散々女とやったあと、脚に力が入らずに歩けなくなる女がいた。

その様を、俺が足腰立てなくしてやったと、
勝ち誇ったかのように見下していたのを思い出した。

同じように、足腰立てなくなった無様な自分。


あいつも同じように、自分を見下していたのかと思うと、
情けなさに、泣くのを抑えることができず、嗚咽を漏らした。








それから、まともに歩けるようになるまでに2日かかった。

脚に力が入らない云々以前に、やはり肛門が痛くてなかなか歩くことができなかった。




久々に出てきた亜月の周囲には、待ってましたとばかりに人が集まり、
山野がやはり例のことを、まだバラしていないのだと確信し、ほっとする。

その山野の姿を、思わず探してしまう。


「どうかしたか?」
やたらキョロキョロする亜月を不審に思い、西川が尋ねる。


「いや・・・」

山野を探しているとも言えず、再び話題に加わる。

その時、教室に山野が入ってくるのが見えた。
亜月の心臓はドキリとはね、嫌な汗が吹き出す。


一瞬、山野も亜月に気づいたようだが、その目は瞬時に反らされてしまった。



心地の悪い気分を味わいながらも、ちらちらと目で追っていたが、
話しかけてくる他の人に気を取られてしまう。

でも、その後も。

どうしても。

なぜか亜月は、目で山野を追ってしまっていた。






西川と坂下をうまく言いくるめて、いつものように連中から逃れて一人になると、
亜月は山野を探した。




タイミングよく、
一人で中庭のベンチに座って雑誌を読んでいる山野を見つけることができた。

この校舎に囲まれた中庭は、開閉可能なガラス張りの天井があり、
すきま風もないので温室効果でとても暖かい。

夏には冷房を入れることも可能だが、ここ最近の省エネ傾向のためか、
ビニールハウス並に熱いので、夏場は誰も近づかないけれど。






さくさくと芝生を踏みしめる足音に気づいたのか、名を呼ぶ前に、山野が先に振り返った。


「・・・三条くん・・・」


無表情なのか、驚いているのか。

山野の表情は亜月には読めない。
表情が少ない人間はとても苦手だ。



山野は立ち上がり、一歩後ずさる。


今日の山野の格好は、黒地に緑の線画で何かのロボットアニメのキャラが描かれていて、
その上から、例のネルシャツを羽織っている。
さすがにボトムにイン・・・ってことはないが。


うわぁ・・・・とドン引きするものの、そんなケチをつけにきたわけではないので、
亜月はさっさと本題に移る。



「あれ・・・バラしてないんだな・・・・」


尋ねても少し目を反らし、黙ったままの山野に苛立ちを覚える。
山野を前にすると落ち着かない。

ここまでじっくりと山野の顔を見たのは初めてで、
レンズ越しで若干小さく見える山野の眼は、意外に切れ長で、鋭い印象を与える。

だが、もさっとした、全く手入れのされていない眉毛のインパクトが強いせいか、
その鋭さに気づいている人は少ないかもしれない。

「ば、バラさない・・・よな?
こないだも言ったけど、俺、なんでもお前の言うこと、聞くし・・・」


いつも自分を取り巻く連中が聞いたら卒倒しそうな言葉が、するりと口をついて出た。
それでも黙っている山野に焦れる。

「なぁ、俺、どうしらいい?何をすればいい?」
苛立ちは不安にすり変わる。

「お、女が抱きたいなら、俺が紹介・・・」
「今後、僕に関わらないでくれ」


亜月が言い終わる前に、山野は早口でそう割り込んできた。



「・・・・え?」

一瞬、何を言われたか分からなくて。


「バラされたくなかったら、今後一切、僕たちに関わらないで」

はっきり、山野は告げる。

「君が、僕たちの趣味をどう感じようと自由だけど、
表立っていちいち否定するのはやめてくれ。話しかけないでくれ」

口調も落ち着いていて、山野の表情はあまり変わらない。
怒ってるのかどうかも。


「君だって、女の子をとっかえひっかえして、授業もよくサボるし口も悪いし平気で人を傷つける。
でも、そのことに対して、君に面と向かって非難する人がいるかい?」

「それは・・・・」

「非難されても、どうせ君は、関係ないとか、うるいさいとか言って、人の忠告なんて聞かないだろ。
俺の勝手だろ、とか、お前に言われる筋合いはないとか思うだろ。一緒だよ。
僕たちが何が好きで、どんなことに楽しみを見出しているかなんて、そんなのは僕たちの勝手だ。
君にとやかく言われる筋合いなんてない。」


「・・・・・・・そ・・・だけど・・・」


「むしろ、ワガママや身勝手な君よりは、僕は周りに迷惑はかけていないつもりだよ」

それを言われると流石に言葉がでない。



「君にだって自分の聖域があるだろ?
僕は自分の聖域を君なんかに踏みにじられたくはない。
仲間うちで馬鹿にするのはかまわないけど、それをいちいち大っぴらに叩くのはやめてくれ!
もう、二度と僕らに構わないでくれ!」

最後に少しだけ声を荒げた山野は、小さな声で、「大丈夫、バラさないよ」と呟いて、足早に去っていった。








バラさないと言われたものの、手放しでも喜べない。

だいたい、ほんとうにバラさない、というのも信じ難い。


亜月の思考は山野のことでいっぱいになっていく。
嫌いな相手のことがずっと、頭から離れないのが嫌で嫌でたまらなかった。




山野のことを思い出すたびに、嫌悪感とは裏腹に、じん・・・と自分の奥がしびれる。

それを打ち消すかのように、
憂さ晴らしにように、その日、亜月は女を抱いた。





柔らかい胸を揉みしだき、性感帯をくまなく愛撫してやって。

艶やかな声に気をよくして、潤みきった女の秘部に、人工膜で覆った自分の猛りを潜り込ませる。

柔らかく包む粘膜が絡みついてきて心地よい。
亜月がその粘膜を突き上げれば、あえやかな女の声が耳にまとわりつく。


でも、そんな女の痴態を見れば見るほど、
女が悦べば悦ぶ程、その喘ぐ様が先日の自分と重なった。

ハッとして、頭(かぶり)を振り、行為に集中する。


女とのセックスは気持ちいい。


それは事実だ。

でも、

あの時のような、我を失う程の、溺れそうなほどの、快楽は味わえない。
あの壮絶な快感を、女は与えてはくれない。



あの、山野に与えられた快感に比べたら、
女との行為が、ただの精子の処理に思えてしまった。



忘れることのできない屈辱を亜月の身体と記憶に刻みつけて、
一番、亜月を苦しめる方法を山野は選んだのに。


奥の性感帯を暴かれて、この女みたいにあられもなく喘いで。

与えるセックスではなくて、与えられるセックス。

気が狂いそうな、脳みそがドロドロにとけてしまいそうな壮絶な快感。
一度味わうと、もう普通のセックスではもの足りなくて。


屈辱であった反面・・・。


(・・・ヤバかったよな・・・あれ・・・・)



今みたいに、人工的な隔たりがあるわけでなく、
粘膜が直接こすれあって、中に出されて征服されて。


思い出すと、ぞくりとしたものが背中を走る。




気色悪い男に、凌辱の限りを尽くされる自分を想像した途端、
ひときわ自分のものが膨らみ、放った精子をコンドームが受け止める。

(もしかして・・・マゾっ気あんのかな・・・俺・・・)


嫌悪が、願望にすり替わった瞬間だった。

意外な自分の一面を垣間見る。





あれから何人かと寝たけれど、結局思考の行きつく先はいつも山野で。


認めたくない。

認めたくはないが、身体があの快感を欲している。



亜月はあまりつくことのない溜め息をついた。
滑らかな頬はほんのり赤みを帯び、瞳には欲情の色が灯り、
亜月の今までにない異常な色気に、周囲がざわめきたつ。

そしてその意味深な視線は、今日も山野を追い続けた。




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はぁはぁ・・・のっけから申し訳・・・!そう、前からやってみたかったんです!
ブサメンオタク×性格ブスイケメン!!

入院中から構想練ってましたww相変わらず拙い文章ですが、
今後の二人の行方を見守っていただければ嬉しいです。
Hシーンのマンネリに関してはどうぞご理解くださいませ・・・<m(__)m>


2012/10/24